2026年6月、スペインの賭博規制当局はブロックチェーン予測市場のPolymarketとKalshiに対し、国内での無許可ギャンブル提供を理由に制裁手続きを開始しました。両プラットフォームへの国内アクセスは暫定的にブロックされ、最終決定まで3〜4か月を要する見込みです。この措置は、予測市場という新興分野が各国の賭博規制とどう折り合いをつけるべきかという根本的な問いを投げかけています。
参考: スペイン政府、PolymarketとKalshiに対し制裁手続きを開始、無許可ギャンブル提供と判断(CoinPost)
分析・見解
今回のスペインの措置は、予測市場プラットフォームが直面する本質的なジレンマを象徴しています。PolymarketやKalshiは、自らを「情報集約メカニズム」として位置づけ、参加者の集合知によって将来の事象確率を算出する市場と主張してきました。しかし規制当局の視点では、金銭を賭けて結果を予測する行為は賭博そのものです。
この問題が複雑なのは、従来のスポーツベッティングと異なり、予測市場には実際に社会的価値があるという点です。選挙結果、経済指標、企業決算など、予測市場は世論調査よりも正確な予測を提供してきた実績があります。2024年の米国大統領選挙では、Polymarketの予測精度が主要メディアの世論調査を上回り、機関投資家の間でも参照されました。
各国の対応は分かれています。米国では商品先物取引委員会(CFTC)の監督下で限定的に認可されており、Kalshiは合法的にサービスを提供しています。一方で英国は既存のギャンブル規制の枠組み内で運用を求め、今回のスペインのように全面的な排除を選ぶ国も出てきました。
技術的には、ブロックチェーン基盤の予測市場は検閲耐性を持つため、地理的ブロックを完全に実施するのは困難です。スペインの措置も、技術に詳しいユーザーであればVPNなどで回避可能でしょう。つまり今回の規制は、法的リスクを明確化する象徴的意味合いが強く、実効性には限界があります。
業界にとってより重要なのは、この事例が今後の規制方針の先例となる可能性です。欧州連合全体での統一基準が検討される際、スペインのような厳格なアプローチが標準になれば、暗号資産予測市場は欧州市場から事実上締め出される恐れがあります。
ビジネスへの影響
予測市場プラットフォームの運営者は、各国の賭博法に基づく事前審査を徹底すべき段階に入りました。特に重要なのは、サービス開始前の法的意見書取得と、各国規制当局との事前協議です。「グローバル展開後に個別対応」という従来のWeb3型アプローチは、もはや通用しません。
既存の賭博事業者にとっては、逆に参入機会とも言えます。ライセンスを持つブックメーカーやカジノ運営会社が予測市場機能を追加すれば、規制リスクを最小化しながら新市場を開拓できます。実際、英国の大手ブックメーカーは政治イベント市場で長年の実績があり、ブロックチェーン技術を組み込むハードルは高くありません。
投資家や利用者の視点では、プラットフォーム選択時に規制準拠状況を確認する重要性が増しています。無許可運営のサービスでは、突然のアクセス遮断や資金凍結のリスクがあります。特に大口の資金を予ける場合は、運営会社の法的基盤と各国でのライセンス取得状況を事前に確認すべきでしょう。